家族信託は「うちには不要」と判断した理由|親が認知症になった家族が調べた結果

介護・終活

父が認知症になったとき、対応を調べる中で必ず出てきたのが「認知症になると預金が下ろせなくなる」「家を売ることができなくなる」という情報でした。年金の入る口座と引き落とし口座が別だと立て替えが必要になる、施設の入居資金に自宅を売ろうとしても売れない——読めば読むほど不安になり、たどり着いたのが「家族信託」でした。

結論を先に書くと、わが家は「家族信託は不要」と判断しました。そして父を見送った今、その判断は正しかったと思っています。この記事では、家族信託の仕組みと、不要と判断した理由、そして「実際、父が亡くなった後どうだったか」まで書きます。

※わが家のケースに基づく体験談です。財産の状況は家庭ごとに大きく違うので、契約を検討する場合は司法書士など専門家に相談してください。

家族信託とは:成年後見より自由度の高い財産管理の仕組み

認知症で判断能力が失われて資産が凍結されると、原則として成年後見制度を使うことになります。財産管理や各種契約を代わりに行う人を法的に決める制度ですが、調べてみるとデメリットが目立ちました。

  • 事務負担が重い(家庭裁判所への報告など)
  • ランニングコストがかかり続ける
  • 後見人を自由に選べない場合がある
  • 一度始めると途中でやめられない

その代わりとして勧められるのが家族信託です。親が元気なうちに家族と「信託契約」を結び、財産の管理・運用を家族に託し、生じた利益は親に返す仕組み。コストは基本的に初期費用のみで、成年後見より自由度が高いのが売りです。

ただし重要な注意点があります。家族信託は本人が元気なうちしか契約できません。すでに認知症と診断されていた父は、もう契約できませんでした。わが家で検討したのは「まだ元気な母はどうするか」でした。

わが家が「不要」と判断した3つの理由

理由1:そもそも財産の規模が違う

家族信託が本領を発揮するのは、不動産をいくつも持っていたり、有価証券が多かったりする家庭です。管理を要するほどの財産がないわが家には、仕組みが大げさすぎました。

理由2:初期費用が50万〜60万円かかる

「初期費用のみ」とはいえ、自由度の高い契約ゆえに専門家によるカスタマイズが必要で、司法書士への報酬は財産の1%程度、だいたい50万〜60万円という情報が多くありました。年金暮らしの両親にこの出費は現実的ではありません。

理由3:託される側(受託者)の負担が重い

契約を結ぶと不動産登記の名義も受託者になり、預金の管理も続きます。きょうだいの誰が受託者になるかで揉める未来も見えました。「揉めないための制度」で揉めては本末転倒です。

【その後】父が亡くなって、実際どうだったか

ここが一番お伝えしたいところです。家族信託なしで父の認知症末期から相続までを経験しましたが、口座凍結や相続の手続きで、大きな問題は起きませんでした。手続きの数こそ多くて大変でしたが、「家族信託をしておけばよかった」と後悔する場面は、わが家の財産規模では一度もありませんでした。

ネットで調べると「今すぐ家族信託を!」という記事が目立ちます(契約に誘導したい専門家の記事も多いのです)。でも実際には、財産がシンプルな普通の家庭なら、慌てて契約しなくても何とかなるケースは多いと感じました。不安を煽られたときこそ、一度立ち止まって「うちの財産規模で本当に必要?」と考えてみてください。

まとめ:知識として知っておく価値はある

  • 家族信託は「元気なうち」しか契約できない。検討するなら早めに
  • ただし向いているのは財産・不動産が多い家庭。費用は50万〜60万円程度かかる
  • 普通の財産規模なら、なくても大きく困らないケースは多い(わが家の実体験)
  • 迷ったら契約ありきの相談ではなく、中立な窓口(地域包括支援センターなど)で聞いてみるのがおすすめ

父の認知症の気づきから看取りまでの全記録はこちらです:親が認知症になったら。気づきから介護保険、看取りまでの2年間全記録

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